世界の貴重な自然遺産、文化遺産を保護・保全し、次世代に継承しようとの目的から、1972年に国際連合(国連)の教育科学文化機関であるユネスコの総会で世界遺産条約が採択されました。正式な条約名は、世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約で、1972年11月16日にユネスコのパリで本部で開催された第17回ユネスコ総会において満場一致で採択され、1975年12月17日に発効しました。わが国は、1992年6月19日に世界遺産条約を国会で承認、6月30日に受諾書寄託、9月30日に発効し、新たな締約国として仲間入りしました。
世界遺産条約の全文は、前文、?文化遺産及び自然遺産の定義 ?文化遺産および自然遺産の国内的および国際的保護 ?世界の文化遺産および自然遺産の保護のための政府間委員会 ?世界の文化遺産および自然遺産の保護のための基金 ?国際援助の条件および態様 ?教育事業計画 ?報告 ?最終条項の8章から構成されています。



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地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには、生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、或いは、重要な地形的、または、自然地理学的特性などが含まれる。

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陸上、淡水、沿岸、及び、海洋生態系と動植物群集の進化と発達において、進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であるもの。

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もっともすばらしい自然的現象、または、ひときわすぐれた自然美をもつ地域、及び、美的な重要性を含むもの。

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生物的多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。これには、科学上、または、保全上の観点から、すぐれて普遍的価値をもつ絶滅のおそれのある種が存在するものを含む。


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人類の創造的天才の傑作を表現するもの。

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ある期間を通じて、または、ある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、町並み計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。

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現存する、または、消滅した文化的伝統、または、文明の、唯一の、または、少なくとも稀な証拠となるもの。

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人類の歴史上重要な時代を例証する、ある形式の建造物、建築物群、技術の集積、または景観の顕著な例。

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特に、回復困難な変化の影響下で損傷されやすい状態にある場合における、ある文化(または、複数の文化)を代表する伝統的集落、または、土地利用の顕著な例。

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顕著な普遍的な意義を有する出来事、現存する伝統、思想、信仰、または、芸術的、文学的作品と、直接に、または、明白に関連するもの。



世界遺産の登録には、まず、世界遺産条約の締約国が、自国の自然遺産、文化遺産の中から顕著な普遍的価値を持つ物件を世界遺産委員会に推薦することから始まります。
自然遺産、文化遺産に共通する世界遺産への登録手順は、日本の場合、関係自治体同意を得て、文部科学省、外務省、環境省、林野庁、文化庁、国土交通省、内閣府のメンバー等で構成される世界遺産条約関係省庁連絡会議で決定し、ユネスコ本部に世界遺産リストへの登録を希望する物件を推薦します。世界遺産リストへの登録は、世界遺産委員会の直前に開催される世界遺産委員会ビューロー会議(世界遺産委員会で選任された7カ国で構成)での事前審査を経て、世界遺産委員会で審議・決定されます。
世界遺産への登録に際しての事前審査は、自然遺産については、IUCNが、科学者などの専門家を現地に派遣し、厳格な現地調査を含む評価報告書を作成、この評価報告書を基に、世界遺産委員会ビューロー会議が自然遺産の登録基準への適合性や保護管理体制について厳しい審査を行います。
文化遺産と複合遺産については、イコモスが(ICOMOS)が、建築や都市計画などの専門家を現地に派遣し、厳格な現地調査を含む評価報告書を作成、この評価報告書を基に、世界遺産委員会ビューロー会議が文化遺産の登録基準への適合性や保護管理体制について厳しい事前審査を行っています。
世界遺産への登録は、国内での政府推薦までの諸手続き、ユネスコ事務局世界遺産センターへの書類の提出、その後のIUCNやICOMOSの調査と評価、世界遺産委員会ビューロー会議での事前審査、世界遺産委員会での審議・決定のプロセスを経て世界遺産リストに登録されるまで長い時間と地道な作業を伴います。



世界遺産基金とは、ユネスコの世界遺産リストに登録された物件を国際的に保護・修復することを目的とした基金で、ユネスコの信託基金として設立されています。世界遺産条約が有効に機能している最大の理由は、この世界遺産基金を締約国に義務づけた分担金(ユネスコに対する分担金の1%を上限とする額)や、各国政府の自主的拠出金、団体・機関(法人)や個人からの寄付金を財源に世界遺産の保護・修復に関わ
る援助金を拠出できることであり、締約国からの要請に基づいて世界遺産委員会が世界遺産条約履行の為の作業指針に基づいて効果的な国際援助を行います。
この世界遺産基金は、世界遺産リストに推薦すべき世界遺産の事前調査費用に対する援助、大地震等の不慮の事態により危機にさらされている遺産の保護・保存のための緊急援助、自然遺産、文化遺産の保護、保全などの研修コースの開催などの技術者研修、保護や保全のための機材購入、修復・補修、専門家の派遣などの技術援助などに使われています。既に、この世界遺産基金は、「万里の長城」などへの国際援助で実績をあげています。



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